「もっと自信を持って、さらなるチャレンジをして欲しい!」
そう感じる部下、あなたの周りにも、いるのではないでしょうか。
そうした部下に、「自信を持て」「チャレンジしよう」とストレートに伝えたとしても、効果が薄いことを、既に実感している方も、いらっしゃると思います。
この記事では、そうした「自信を持って欲しい部下」に接するときの3つの視点を共有したいと思います。
1.小さな行動・小さな変化を肯定する
部下に自信をつけさせるために必要なのは、部下の行動や、小さな変化を、ひとつ一つ丁寧に肯定していくことです。
人は、自分の行動を肯定されると、「この行動は良いものだ・上手くいった」と認識し、またその行動を繰り返そうとするもの。そして、こうした成功体験の積み重ねの先に「自信」があります。
あなた自身が部下を肯定する、褒めることも、もちろん効果があります。
が、もし可能であれば、些細なことでも「自分自身で目標を設定し、達成する」「自分の成長を見つけ、自分自身で成長したと認める」という経験を、本人が、自分自身で積めると、より効果的です。そうすれば、自分自身で、自分を肯定する、褒めることができるようになるからです。
自信は「気持ちの問題」ではありません。行動と経験の先にあるものです。
2.行動できないときは、行動できない気持ちを尊重する
「自信をつけさせるために、部下の変化を肯定する必要があることはわかった。とはいえ、そうはいっても、本人が積極的に行動を変えようとしない。行動しようとしないから、肯定できるところが見つけられない……」
そうお感じになっている方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
そんな時に思い出して欲しいのは、「人は、変化することを怖がる生き物」だということです。
部下が今している行動は、その部下が今までに、仕事を、あるいは人間関係を上手くこなすために、身に着けてきたものです。そして、「”これで上手くやれている”と感じている行動を、変えたくない」と感じるのは自然なことです。
明らかに上手くいっていない状況になったとしても、過去の成功体験を手放すのは、とても難しいものです。
私自身も、過去、働きすぎであることを自覚しながら、過労で倒れるまで、それまでの仕事のやり方を見直すことができなかったという経験があります。それどころか、当時は、心配してかけていただいた言葉も、「一生懸命仕事をしている自分」を否定しているのだと捉えて、反発すら覚えていました。
当時の私にとっては、「たくさん仕事をする」「最後まで助けを求めず、1人で仕事をする」ということが、自分が手に入れた「上手くいく行動」のひとつでした。ただ、仕事の規模が大きくなってくれば、それでは上手くいかなくなることは、この記事をお読みの立場の方には、自明のことだと思います。
しかし、それまで1人で上手くやってきた成功体験を捨てることができなかった私は、「1人でなんでもやりすぎる」「仕事を抱えすぎる」という言葉を、自らのここまでの努力や実績をも否定するものだと、無意識にも感じていました。
その結果、何を言われても「でも、結局はこれが一番速いから」「どうせ、誰も最後まで一緒にやってはくれないのに、口ばっかり」と、話を聞く以前に、攻撃的な気持ちになってしまい、どんなアドバイスも、どんな心配りも、受け入れることができない状態になってしまっていました。
もし、あなたの部下が、変化を怖がっている状態なら、まずは、現在の行動を肯定していることを伝えることが必要になってきます。肯定はしにくいな、と感じる場合は、少なくとも、「変化が怖い」と感じることを、尊重することが必要です。
「今」を肯定できるから、安心して変化を選べるようになるのです。
「今の自分」を否定されると、変化することはもっと怖くなります。「変化することで、さらに否定されるかも。もっと状況が悪くなるかも」と感じるからです。さらに自信をなくす、負のループに入ってしまいます。
部下に自信をつけさせようとして、かえって自信をなくさせる結果を招いているのなら、とても残念なことですよね。
3.「自信」にこだわりすぎることは、かえってマイナス
もう1つ、知っておいて欲しいのは、行動を変える、成長するためのチャレンジに、必ずしも「自信」は必要ないということです。
確かに、自信を持っていれば、部下はたくさんのことにチャレンジし、その分、成長も早くなるかもしれません。だからといって、自信がないとチャレンジしてはいけない、ということでも、ないと思います。
ここまでも見てきたように、自信は行動すると同時に養われていくものでもあります。
もしかしたら、「自信がないから、チャレンジできないのでは」と、あなたが考えて接していること自体が、非言語コミュニケーションや、ちょっとした言葉の端々を通じて、「自信がないからチャレンジしてはいけないのだ」と、部下に伝えてしまっているのかもしれません。
「どうせできないだろう」と接していると、それが部下に伝わってしまい、部下が行動しようとしなくなる、というのは、とても良く聞く話です。
だからこそ、「自信がなくても、自由にチャレンジしていい」という視点を、自分の中に、常に持っておくこともまた、大事なことだと思います。
おわりに
どんな人にも、ここまで生きてきた、その人だけの歴史があるもの。
あなたが自信をつけてきた過程や、行動できるようになった過程があるように、自信がないように見える部下にも、そのように行動するようになった過程があります。
あなたにとって、どんなに不可解な行動であったとしても、本人にとっては、過去の経験に照らして判断した、きわめて当然で、合理的な行動なのです。
- 行動や変化を肯定すること
- 行動できない気持ちも尊重すること
- 「自信を持つこと」にこだわりすぎないこと
ここでご紹介した内容は、ごく基本的なことにすぎません。
あなたが、相手に、本当にチャレンジしてほしいなら、ここでご紹介した3つの視点ををはじめとする、相手の歴史を受け入れ、さらにもっと行動したいと感じてもらえるような関わり方も、きっと柔軟に取り入れることができると思います。
そしてまた、これらはあなたが“あなた自身”に声をかける際にも大切なポイントになります。
ご自身が部下と自信を持って関われるようになるためにも、ぜひ、まずはご自身に対して実践してみてくださいね。