新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、在宅勤務・テレワークが急速に普及しています。
と同時に、会社やオフィスに出社しない勤務スタイルが広がることで、会社への帰属意識やロイヤルティを持てない社員が増えるのでは、という心配の声も、よくお聞きするようになりました。
実際に私自身も、在宅勤務が中心となり、同僚と話す機会が激減しました。一人で進めるタイプの仕事をしている社員は、ともすれば、1週間誰とも話さないということが起こりえるのでは、とすら思います。
こうした状況で、会社への帰属意識やロイヤルティを高めるには、どうしたらいのでしょうか。
今日は「会社へのロイヤルティ・帰属意識を高める方法」のお話をしたいと思います。
1.帰属意識は”場所”より”人”が作る
帰属意識を高めるには「ここに居場所がある」と感じてもらうことが必要です。では、人は、どんな時に「居場所がある」と感じるのでしょうか。
居場所、というのは、単に「オフィスに席がある」ということではありません。同じオフィスに座っていても、その会社に所属している実感を得られていない人は、驚くほど多いものです。
一方で、特定のオフィスや席がなくても、「このコミュニティ(チーム)の一員である」と強く感じる場合もあります。
私は、トラストコーチングスクールの認定コーチコミュニティに参加していますが、このコミュニティに対して感じるものがまさにそれです。特定の場所がなく、オンラインでやり取りするだけの仲間も多くいますが、それでも所属している実感がありますし、仲間の認定コーチがより活躍できる場所を作りたいと、行動もしています。
「居場所がある」と感じられるかどうかの違いは、何なのでしょうか。
それは、「認められている」と感じているかどうか、です。
自分が所属している場所の仲間から認められた経験が多ければ多いほど、また、認められていると感じられる範囲が大きければ大きいほど、「自分はここに居ていいんだ」と感じ、帰属意識は高まります。
その昔「社員は家族」と宣言する経営者が一定数いて、比較的、好意的に受け止められていた時期がありますが、こうしたメッセージも同じです。「家族のように、仕事も、仕事以外も、あなたのことを気にかけていますよ」と伝えることで、社員の既読意識を高める効果があったわけですね。
2.「認められている」と感じてもらう方法
とはいえ、今は、様々な事情から「社員は家族」と宣言することは、必ずしも歓迎されるものではなくなりました。
事業環境が変わり、会社として、社員の生活を丸ごと保証するような関わり方ができなくなった、ということも、もちろんひとつの要因ではあります。ただ、それ以上に、社員の側が、家族のように拘束されることに抵抗感を覚えるようになった、ということも言えるのではと思います。
そんな状況で、どんな接し方をすれば、部下やメンバーに「認められている」と感じてもらえるのでしょうか。
こうした問いを持つとき、多くのリーダーが考えるのが「仕事を任せよう」「もっと褒めよう」ということです。セッションでも、とてもよく話に出ます。
仕事を任せることや、褒めることも、けっして間違いではありません。ただ、それだけでは足りないこともある、ということは、知っておく必要があるでしょう。仕事を任され、褒められることで、部下が「認めてもらえた」と感じられるのは、自分のほんの一部分にすぎないからです。
むしろ、「仕事」に関して”だけ”のアプローチが続くと、「この仕事ができれば、誰でもいいんだな」と受け取る人が出てくることもあります。
「ここで必要とされているのは、自分ではなく、単に”この仕事ができる人”だ」
部下がもしそう感じたなら、むしろ、帰属意識は弱まってしまうかもしれません。時折「会社の歯車になりたくない」と言う方がいらっしゃいますが、そうした人は、まさにこの心持ちでいるのではと思います。
3.仕事以外の部分をどれだけ大切にできるか
会社やチームへの帰属意識を持ってもらうためには、メンバーによりたくさん「認められている」と感じてもらうこと。そのためには、仕事以外の部分まで、どれだけ大切にし、認められるか、ということが重要になってきます。
人は、自分が大事にしているものを大事にしてくれる人に、より好感を抱き、「相手の大事なものも大事にしたい」と思うものです。
そのために必要なのは「部下のことをもっと知ること」です。
- あなたは、部下が、仕事以外で大切にしていることを知っていますか
- 誰かに、言いたくても言えないでいることを知っていますか
- 毎日、楽しみにしていることを知っていますか
もし、即答できないのなら、部下とコミュニケーション量を増やし、より部下のことを深く知ることが必要です。
詮索されることを嫌う部下もいるかもしれません。無理に聞き出す必要はありませんが、それでも「そこも含めて、あなたのことを気にしているよ」と、伝えておくことは、無駄ではないと思います。
知りたいと思って接しているからこそ、部下の行動や言葉の端々から、たくさんのことに気づけるものです。
おわりに
こうしたことは、もしかしたら従来、同じ場所で仕事をしていた中で、できていたことかもしれません。ですが、テレワークが中心になると、話をする機会も、様子を知る機会も激減し、相手が何を考えているのかを察するのが難しくなります。
そのことに気づき、無意識にも不安を感じているからこそ、きっと「帰属意識を持てなくなるのではと心配」とお考えになっているのではと思います。
今までと同じように、チームの一員として感じてもらうには、自然と相手のことがわかるのを待つのではなく、”自分から”より頻繁にコミュニケーションをとり、相手のことを知ろうとする努力をすることが必要になってきます。
テレワークが中心となってから、他部署の同僚を始め、他社の友人、クライアント、コーチ仲間と話をしていると、気が付くことがあります。それは、多くのリーダーが、オンラインで「毎日の定期的なコミュニケーション」の場を設定するようになった、ということです。朝会や日次の定例ミーティングなどですね。
そうした場を作ることで、仕事上必要な情報交換だけでなく、相手を知ろうと努力する場自体を作り出しているのかもしれません。
部下やメンバーに、どんな形で帰属意識を感じて欲しいのか。そのために、自分自身が、部下やメンバーとどうかかわっていくのか。
それを自ら考え、行動に移せることが、テレワーク時代の、リーダーのあり方なのではないかと思います。