「書く」ことで得られるコーチとして一番大切な基礎力

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コーチングを学ぶと、いろんな場面で「書く」ことが推奨されます。

コーチ業を志す人は、SNSなどでの発信を勧められたことがあるかもしれません。それ以外でも、コーチングを身に着ける過程で、自分の気持ちや考えだったり、収集した情報の整理だったり、思いついたアイディアだったりを、書き留めておくことを勧められることは多いです。

もしかしたら、なぜ「書く」ことが、こんなにも勧められるのか、疑問に感じた方もいらっしゃるかもしれないな、と思うのですが、「書く」ことが推奨されるのは、コーチングが、「言葉」を使って、思考や感情を扱う技術だから、ということが大きいです。

この記事では、「書く」ことによって、コーチとしてどんな力を伸ばすことができるのか、と、その理由について書きたいと思います。

1.「書く」ことで得られるもの

「書く」ことによって得られる力の1つ目は「言語化力」です。

人は、「言葉」によって、多くの物事を理解しています。赤くて丸い果実を「りんご」だと認識できるのは、それに「りんご」という名前がついていることを知っているからです。

では、人の気持ちについてはどうでしょうか。「嬉しい」「怒っている」「悲しい」「楽しい」。私たちは、自分の感情に、こうした名前がついていると知っているから、例えば誰かからプレゼントをもらった時に感じる快の感情を、「嬉しい」だと認識できます。言葉にできない感情を捕えることは、できないということはありませんが、とても難しいです。

つまり、気持ちや思考を言葉にして書き残しておく、というのは、まず第一に、「言葉にする」というところに意味があります。言葉にすることで、自分の気持ちを理解しやすくするんですね。

2.言語化できないと理解できないこと

自分の状態を自分で理解できないことで、明確にデメリットを感じたのは、私の場合は、過労うつで倒れたときでした。

当時、私は、疲労も、ストレスも、全て「辛い」という同じ言葉で理解していたのです。それまで、「辛い」と感じた時は、しばらく我慢していれば回復したので、当時も、ただ「辛い時期」が過ぎるのを何もせず待っていました。

ところが、いつまでたっても、「辛い」は去っていかなかったんですね。

それどころか、ある日、ベッドから起き上がれなくなってしまいました。何とか体を起こしても、今度は涙が止まりません。特に何か起こったわけでもないのに、ずっと涙が出るんです。

幸いにも、私は、その症状が「うつ」の症状の1つだと知っていましたので、カウンセラーに相談に行きました。

その時に聞かれたのが「気分の落ち込みはありますか」ということでした。

私の答えは「わかりません」。

「落ち込んでいるかどうか」という視点で自分の状態を考えたことがなかったので、”気分の落ち込み”が、自分のどんな状態を指すのかわからなかったのです。

この時は、経験豊富なカウンセラーの方が、いろいろとかみ砕きながら話を聞いてくれて、私はどうやら相当気分が落ち込んでいるらしい、と徐々に気づくことができ、うつの治療にもつなげることができました。

こうした経験からわかるのは、言葉と紐づいていない感情は、実際には強く体調や精神状態に作用していたとしても、理解の上では「ないもの」となってしまう、ということです。

多くの人が、言葉と紐づいていない感情を、とてもたくさん持っています。

言語化しなくても、感情や思考はなくなるものではありません。ただ、自分では感じていること、考えていることを理解できないので、その感情や思考が影響していることを、自ら捕えることができません。

怒りや落ち込みといった、不快の感情を感じにくければ、場合によっては、不調が続いているにもかかわらず、治療が遅れ、より深刻な状態になってしまうかもしれません。

嬉しい、楽しい、といった快の感情が感じにくければ、日々を過ごすエネルギーが沸きにくくなったり、何かをやろうと考えることができにくくなる可能性があります。

3.自分の感情を言語化できることがコーチ力につながる

では、自分の気持ちや思考が言葉として理解できるようになることと、コーチングは、どのように関係するのでしょうか。

シンプルに言うと、自分の心の状態に敏感になることで、接する人の心の状態にも敏感になります。そして、相手の心の状態に敏感になれると、コーチングの質が飛躍的に向上するのです。

自分の感情を言葉にして、自分の心の動き、思考の動きを敏感に感じ取れるようになると、接する相手の心の動き、思考の動きも、より細かく見ることができるようになります。

コーチングは、相手の心の状態と、人間関係にアプローチする技術です。ですから、相手の心の状態を理解できること、感じ取れることが、コーチングの質に直結するんですよね。

人は、心の状態によって、受け取れる言葉や、響く言葉が異なります。相手の心の状態を敏感に感じることができるようになれば、今が相手の話を聞くべき時か、それとも自分の話を聞いてもらうべき時かの判断の精度が上がりますし、より適切な表現で、相手に伝えたいことを伝えられるようになります。

おわりに

「書く」ことが推奨されるのは、それがコーチ力の向上に明確に繋がるからです。

とはいえ、座ってノートを開いてみても言葉が出てこない、という方も、きっと多いと思います。私自身も、日記はすぐに挫折する方です。笑

そんな方は、まずは「今日の気分」をメモしてみるところから、スタートしてみるのもいいかもしれません。

  • 元気
  • 普通
  • 不安
  • イライラ
  • 寂しい

など、一言でかまいません。

慣れてきたら、「今、何に不安を感じているのかな?」など、もう一段階掘り下げて考えていくのも、良いと思います。

「書く」というのは、ペンと紙、スマホなどがあれば、誰でもできることです。そして、ほぼ確実にコーチ力向上につながることでもあります。

コーチングを既に学んでいる方も、これから学ぶ方も、あらためて「書く」にトライしてみることで、もしかしたら、今まで知らなかった、自分の意外な一面に出会えるかもしれません。

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