コーチングに興味をお持ちの方の中には、「このまま同じように働き続けるのは不安」「これからのキャリアをどう考えていけばよいかわからない」とお感じの方も、きっといらっしゃるかと思います。
私自身、コーチングを学ぼうと決意したのは、過労うつで倒れた時に、「このまま同じように働き続けたら、きっとまた倒れるに違いない」という、危機感を抱いたからでした。
今回は、そうした方に向けて、うつになるほど追い込まれていた私が”コーチングを学んだからこそ”得ることができた、2つのことをお伝えしたいと思います。
その2つとは、「コミュニケーションが苦にならない自分になれたこと」と「成長を楽しめる自分になれたこと」です。
1.コミュニケーションが苦にならない自分になれたこと
コーチングを学んで、真っ先に効果を感じたのは「コミュニケーションが苦にならなくなった」ということです。
元々、私は、コミュニケーションがとても苦手。新人の頃から、「上から目線」「言い方がきつい」「説明が独りよがりで不親切」といつも言われていました。ただ、どんな発言や行動を、どう捉えた結果、”上から目線”だと感じたのか、ということは、誰も具体的には言ってくれませんでした。
改善の努力はしましたが、原因がわからなければ、どれだけ努力しても、効果は出にくいものです。私への評価は、何年たっても、変わらず「上から目線」「言い方がきつい」「説明が独りよがりで不親切」でした。
努力に疲れてしまった私は、気が付いた時には既に、人と関わるのが億劫になり、さらには、誰かと会話するときにはいつも「上から目線?にならないように……」と、強いプレッシャーを感じるようになっていました。何か言われるたびに、「私の何がいけなかったんだろう……」と落ち込む日々。
強いプレッシャーを感じながら人と関わるのは、とても大変です。ずっと緊張状態なわけですからね。当時の私は、誰かと関わった後は、常に心身ともにぐったり、休日は誰とも会わず現実逃避……を繰り返していました。きっとこれが、うつ状態に陥ったひとつの原因だったと思います。
こうした状況を変えるきっかけになったのが、コーチングでした。コーチングを学んだことで、そもそも、自分の発言の何が「上から目線」「言い方がきつい」「説明が独りよがりで不親切」と相手に感じさせていたのかがわかったのです。
原因がわかったことで、努力の仕方もわかるようになりました。努力の仕方を変えたことで、周りの反応も変わり、人と関わること自体が苦ではなくなっていったのです。
さらには、「努力すれば、人間関係は変えられる」と実感できたことで、より周囲の人と丁寧に関わろうと考えられるようになりました。
2.成長を楽しめる自分になれたこと
もう1つ、コーチングを学んで大きく変わったのは「成長を楽しめる自分になれたこと」です。
実は、うつ状態に陥った時の私は、コミュニケーションとは別に、もう1つ悩みを抱えていました。それは、「自分は、もう成長をあきらめたほうがいいのではないか……」というものです。
それまでの私は、「知識と経験をベースに、よりたくさんの仕事を、より速くできるようになること」が成長だと思っていました。実際、新人~若手の時期は、それで大きく世界が広がりましたから、これも、間違っていなかったとは思います。
とはいえ、そうした考え方を持っていたために、徐々に「知識や経験がない人に仕事を任せることはできない」とも考えるようにもなっていました。
当然のことですが、周囲の人が、自然と自分の望むように知識をつけたり、経験を積んできてくれるわけがありません。その結果、私は「同じような知識や経験を持つ人がいないから、自分の仕事は他の人に頼めない。全部自分でやらなければ」と考えるようになっていきました。
今思えば「そんな無茶な」という感じですが、当時は、本気でそう思っていたのです。
仕事を頼むことができませんから、自分で仕事を抱え込むことになります。仕事が多いと、やっぱり体力的にも、精神的にも辛いわけです。その状態から抜け出そうと考えても、今までと同じように「知識と経験」を求めて勉強すれば、仕事がさらに増えて、より厳しい状況になります。
今が苦しい、かといって、努力すればさらに苦しい状況になる。そのため、だんだんと、成長することが悪いことであるかのように感じるようになってしまったのです。
どんどん増える仕事に圧倒されながら、それでも、その仕事のやり方を手放すことができなかった私は、やがて過労とうつを併発して倒れることになります。そこで初めて、「今のままの考え方、仕事の仕方では、また倒れてしまう」と危機感を感じ、「知識と経験をベースに、よりたくさんの仕事を、より速くできるようになること」以外の成長の方向性を模索し始めます。
その時に、白羽の矢を立てたのがコーチングでした。コーチングのことは、まだよくは知りませんでしたが、コーチングでは「知識」ではない部分に、価値をおいているのでは、と感じたのです。
幸運なことに、その選択は「当たり」でした。
コーチングを学んだことで、知識や経験以外の部分で、自分の伸びしろを、たくさん見つけることができました。その伸びしろに取組むことで、仕事の負担を軽くするだけでなく、仕事の幅を広げ、より大きな仕事や、より複雑な仕事にチャレンジすることができる、と気づきましたし、さらには、実際にチャレンジすることもできました。
コーチングを学んで、より多くのことが見えるようになったおかげで、「努力すればするほど状況が悪化する」という負のループから抜け出すことができたのです。
足が止まっていた当時と、今の差は、自分の伸びしろが、自分で見えていること。そして、その伸びしろに向かって努力することで、確実に自分は成長し、より望んだ未来に近づける、と信じることができていることです。
だからこそ、辛いことがあったとしても、歩き続けたい、成長しつづけたい、と思えていますし、成長を楽しむことができています。
おわりに
「このまま同じように働き続けるのは不安」「これからのキャリアをどう考えていけばよいかわからない」とお感じの方でも、抱えている課題や、苦しいと感じていることは様々だと思います。
中には、到底越えられないような壁があるように感じたり、抜け出せない負のループにはまり込んでしまったように感じている方も、いらっしゃるかもしれません。
直面していることは、人それぞれだと思います。ただ、ひとつだけはっきりと言えるのは、こうした不安というのは、無意識の思い込みや決めつけ、あるいは自分自身の視野の狭さなどから来ることが非常に多いということです。
私自身もそうでした。
コーチングは、コミュニケーションの技術であると同時に、自らの視野を広げるものでもあります。なので、もしあなたの不安が「無意識の思い込みや決めつけ、あるいは視野が限られていること」から来るのだとしたら、コーチングを受けたり、学んだりすることで、きっと、大きく状況が変化するでしょう。
もちろん、今のままでいたい、ということであれば、それを否定するつもりはありません。それもまた、ひとつの選択です。
ですがもし、あなたが、今の状況を変えたい、本当はもっと別の未来がいいんだ、と感じているのなら、きっと「コーチングを受ける・学ぶ」ということが、大きな、そしてとても有効な一歩になるのではないかと思います。
なお最後に、念のためお伝えしておくのですが、私の場合は、通院やカウンセリングを経て、うつ症状がある程度回復してから、コーチングを学び始めました。
うつ症状がある人はコーチングを学べない、というわけではないですが、うつ症状のある人への対応に慣れていないコーチがいることも、また事実です。私自身、最初にコーチングを学んだ時は、自分の状態も考慮し、とても慎重にコーチもスクールも選びました。
もしかしたら、この記事を読んでくださっている方の中にも、現時点で、うつ症状があるという方もいらっしゃるかもしれないな、と思っています。
コーチングに興味がある、とか、なんとかして前に進みたい、という気持ちは、きっと回復の原動力になると思います。だからこそ、チャレンジするのであれば、ご自身に過度な負荷がかからないような進め方をしてくれるコーチを選んでいただきたいです。無理をして悪化させては、元も子もないですから。
あなたのその勇気ある一歩を、一緒に大切にしてくれるコーチと進む道は、きっと特別なものになるはずです。